[00:01.659]君の右手は頬を突いている

[00:08.308]僕は左手に温いマグカップ

[00:14.384]君の右眉は少し垂れている

[00:20.590]朝がこんなにも降った

[00:25.156]

[00:26.537]一つでいい

[00:28.154]散らぬ牡丹の一つでいい

[00:31.462]君の胸を打て

[00:33.668]心を忘れるほどの幸福を

[00:39.246]一つでいいんだ

[00:40.864]右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を

[00:51.858]一人行くその静けさを

[00:58.283]その一つを教えられたなら

[01:03.904]

[01:04.978]君の左眉は少し垂れている

[01:11.585]上手く思い出せない

[01:14.742]僕にはわからないみたい

[01:17.678]君の右手にはいつか買った小説

[01:23.878]あれ、それって左手だっけ

[01:30.610]

[01:36.098]一つでいい

[01:37.744]夜の日差しの一つでいい

[01:40.867]君の胸を打つ、心を覗けるほどの感傷を

[01:48.723]一つでいいんだ

[01:50.338]夏に舞う雹のその中も手探りで行けることを

[02:01.391]君の目は閉じぬことを

[02:08.500]

[02:20.291]僕の身体から心を少しずつ剥がして

[02:28.199]君に渡してその全部をあげるから

[02:32.726]剣の柄からルビーをこの瞳からサファイアを

[02:39.914]鉛の心臓はただ傍に置いて

[02:46.365]

[02:48.700]一つでいい

[02:50.360]散らぬ牡丹の一つでいい

[02:53.505]君の胸を打て

[02:55.895]涙も忘れるほどの幸福を

[03:01.383]少しでいいんだ

[03:02.994]今日の小雨が止むための太陽を

[03:11.639]

[03:14.038]少しでいい

[03:15.646]君の世界に少しでいい僕の靴跡を

[03:21.047]わかるだろうか、君の幸福は

[03:26.605]一つじゃないんだ

[03:28.270]右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を

[03:39.231]君が行く長いこれからを

[03:45.676]僕だけは笑わぬことを

[03:52.147]その一つを教えられたなら

[03:58.173]

[04:01.580]何を食べても味がしないんだ

[04:08.395]身体が消えてしまったようだ

[04:14.187]貴方の心と私の心が

[04:20.770]ずっと一つだと思ってたんだ